土 .7

何日たったのだろう。2日くらいだろうか?よくわからなかった。 僕は縦横2mの四角い大きな箱に入っている。 * 「この中へ」 僕をリビングルームまで案内した女は手に持っていた黒いコットン製のシャツとテロテロとしたズボンを渡しリビングから消えていっ…

土 .6

ぼくちゃんは自分で自分を操作しているような感覚の中にいた。 彼はジープチェロキーを操作している自分を操作しているつもりでいた。 パークシティ浜田山E棟の目の前にある並木道に車を横付けしたのは8時56分だった。 「僕はサイドブレーキを引く」 彼は…

土 .5

「されど、死ぬのはいつも他人」 ルーアン記念墓地 マルセル・デュシャン墓石より 僕はパークシティ浜田山の住所をカーナビに入力した。そこにいけば「ひょんなことから土に埋まってしまったお父さん」がどこに埋まっているのかわかるらしい。コストコへ一緒…

土 .4

ジープ・チェロキーはなかなかにナオン受けのいい車だ。 とりわけ自分で物事を考えるために必要な脳の一部分がネイルカラー除光液の乱用に付随するアセトン吸引により萎縮してしまっているような女性から一定のポピュラリティを勝ち取っていると言える。 胸…

土 .3

Here comes the sun Here comes the sun, and I say It's all right 太陽が昇る ここに太陽が昇ってくる。僕は言うんだ 大丈夫だね! The Beatles 『Here come the sun』 サウナに入った後で水風呂に浸かると脳の負荷が軽くなる気がする。 もやもやとした霧…

土 .2

やっぱり、俺は頭がどうかしてるかな?ハンモックを蜘蛛の巣と間違えるなんて。だが、俺が近眼だって、俺のせいじゃない。 レイモン・ラディゲ『ペリカン家の人々』 土にうまってしまったお父さんを出してきなさいと言われ、しぶしぶ車のエンジンをかけたま…

お父さんからメールがきた。 「ひょんなことから土にうまってしまい、身動きが取れません。はやくきてください。」 僕はお母さんにメールのことを伝える。 「お父さんがひょんなことから土にうまってしまっているみたいだよ。」 「じゃあ、ぼくちゃんがいっ…