Dancing on the Ceiling
[証言1] 蜘蛛くん
よく床で眠る人だったね。近くにベッドもあるんだ。なのに床で眠るんだよ。
たいていは浮かない顔してた。よく家の中にお邪魔してたんだけどさ。
僕がダンスしてるところ。たくさん見てくれたんだよ。結構いい顔してたよ。そういうときだけはね。
煙たがられると思ったんだけどさ。だから僕もあの人のことは好きだったよ。
ベッドで眠ってほしかったな。
[証言2] マダム便座カバー
最近はあまり見かけませんでしたよ。日に日にトイレを使わなくなっていったんです。
昔はよくお尻を預けてくれたものですけどねぇ。そういえば私ぶっかけられたこともあるんですよ。年下の男の子になんてね。まあ事故だったんですけども。
いずれにしても最近はめっきり姿をみせなかったです。憔悴しきっていましたよ。
おそらくトイレに起き上がることもできなかったんでしょうね。私もそろそろ今後のことを考えないとダメかなぁ。
[証言3] 親方・2Lペットボトル・アルプスの天然水
滅多にいねえタイプだよ。普通飲まれたら終わりだよ。わかるか?たまに備蓄されるようなやつもいるけどさ、それだって中身があっての話だろ?
俺も飲まれちまったからには悔いはねえって感じだったよ。
ところがどっこい。ホントにさ。勘弁してほしいよ。あいつ自分のブツを俺の中に突っ込んできやがった。挙句の果てにションベンしやがるんだよ。もう最初は腹立ったよ。
かちんかちんってな(笑)そりゃあそうだろ?
だってさ。俺たち飲まれるためにあるんだよ。本質が実存に先立ってるわけだよ。
わかるだろ?何かを出されるために足一本で踏ん張ってるわけじゃあねえからよ。
そういや、あいつだんだんションベンもしなくなってったな。心配だったけどわかるんだよ。こいつはいろいろと決着をつけようとしてるんだってな。俺も無粋じゃねえから、その辺はそっとしておいてやろうって決めたんだよ。あいつがきめたことだからさ。
総括
だれも知らない。だれも見ない。蜘蛛が天井を踊る。便座カバーは誰にも座られない。
ペットボトルの中にはオレンジ色の液体が半分。腐敗した男が一人ぶらさがっている。